顧客：大手建設コンサルタント様
概要
運搬計画最適化シミュレータの開発
工事現場が複数ある建設工事では各現場間で重機や資材等の物資のやり取りが生じます。 本事例では主に建設現場で発生する土砂を対象とし、その運搬計画の検討を行いました。 土砂の運搬を伴う土工事では大量の土砂が積込、運搬、積降されます。 その運搬計画の策定のためには様々な制約を考慮する必要があり、大きな時間コスト・労働コストを要します。 また、運搬工事には様々なリスクが内在し、そのリスクを見落としてしまい工事の遅れにつながるという危険性があります。 そこで構造計画研究所では建設現場の土砂運搬プロセスを最適化する土砂運搬最適シミュレーションを行い、効率の良い運搬計画を短時間で提案するツールを開発しました。 本ツールを使用することにより、短時間で自動的に運搬計画を策定することが可能となりました。 また、条件を変えた様々なシナリオ検討を簡単に行うことができるようになり建設工事のリスク分析に時間を割くことができるようになりました。 さらに、工事途中においても工程遅延などの進捗実績を反映して計画を再検討することも容易となり、現場の工程破綻への対応やリソース調整を素早く行い、工事のムリ・ムダを最小限に抑えることができました。 弊社シミュレータを使用することにより、土砂運搬工事の計画策定コストとリスクの両方を削減することが可能となり、生産性及び品質の向上に貢献しました。
課題
運搬計画策定に掛かる時間および労力
土砂運搬計画を立てる際は、どの現場にどの程度の土砂を搬入（あるいは搬出）しようとしているかという前提のもと、現場と現場の距離・道路の容量などを考慮し実行可能な計画を作る必要があります。 計画の策定には担当者の主観や経験に依存するところが多く、また、複数工事間の土砂量の調整や配分検討に多くの時間と労力を費やしている実態があります。さらに、苦労して策定された計画がどの程度最適なものなのかがわからない点も課題として挙げられます。
土砂運搬事業の様々なリスクの埋没
土工事で発生する多量の土砂処理には事業遂行上のリスクがあります。 リスクの具体例として土砂の需給時期のずれによる仮置き場の混雑、運搬距離の遠隔化による道路状況の複雑化、大型車運搬による騒音振動などの社会問題や受入地周辺住民からの苦情など様々なものが考えられます。 その他、工事が遅延した場合などは計画全体が破綻し、様々な想定外の問題が生じるリスクもあります。 そのため、リスクを計画時に把握することは非常に重要な作業となります。しかしながら、計画策定に多大な時間と労働コストを要するため、リスク要因の調査に余裕を持って臨めず、結果としてリスク分析が不十分になるという課題があります。
ソリューション
コストを削減した効率的な運搬計画を提案するシミュレータ
複雑な条件を伴う運搬計画の作成に対して、数理技術を適用することにより最適な土砂運搬計画を求めるシミュレータを開発しました。 シミュレータでは、どの時期にどこからどこへ土砂を運搬した方が良いか、各道路の運搬車の通行台数は適切かなどその他様々な条件を考慮します。 本シミュレータを用いることで計算条件にて指定した各現場の搬出入土砂量を満足し、運搬コストを削減した効率的な運搬計画を短時間で提案することができます。 また、担当者がシミュレータにより得られた運搬計画を確認し、事業遂行上のリスクがあれば計算条件を見直し再計算することで、リスクを加味した運搬計画を作成することができるようになります。
成果
運搬計画の生産性及び品質の向上
開発したシミュレータを用いることで運搬計画策定に掛かる時間と労力を大幅に削減することができました。 また、最適化技術を用いるため、人手で作業するより効率の良い運搬計画を提案することができました。
土工の実態把握と事業遂行上のリスク要因の抽出
運搬計画を短時間で自動作成できるため、複数シナリオを想定した幅広い検討も可能となり、土砂処理に伴うリスクの所在の早期発見と対応策の検討が容易となりました。また、工事の遅れなどにより計画がずれた際の計画見直しも簡単にできるようになり、工事全体のムリ・ムダの削減、そしてリスクの低減に貢献しました。
今後の展望
様々な物資の運搬計画への適用
上記事例では建設時の土砂運搬計画策定について取り上げましたが、建設工事における運搬対象は他にも挙げられます。 例えば、土砂以外にも重機や建設資材等の建設工事で使用する様々な物資も含めて運搬計画を検討することがあります。 また、人員の配置なども考慮した運搬計画を立てる場合もあります。 一方で、検討項目が多く複雑になればなるほど、人手での計画策定は一層困難になります。 本事例で紹介したツールは土砂のみならず様々な運搬計画に応用可能です。 今後はより幅広い建設工事全般の運搬計画に貢献していきます。
建設のオペレーションズ・リサーチに関するお問い合わせ
本事例の土砂運搬計画最適化に関するお問い合わせは、下記フォームにご入力ください。