顧客 : 東京理科大学工学部経営工学科様

お客様の研究とOR部による解決

電力信頼性維持と設備投資・維持費用の最小化を実現したい →  電力ネットワークシステムのシミュレーション評価

災害等により商用電力の使用制限や一時停止となる事態が発生すると、電力供給が不足し、様々な社会システムに多大な影響を及ぼします。事業主にとっては、工場、医療施設、警察・消防施設等といった重要施設での求められる電力システムの信頼性(許容される稼働停止時間)を満たし、設備投資や維持費用を最小とする構成を求めることが課題です。

そこで、単に自家発電設備や蓄電設備を設置するだけではなく、電力ネットワークシステム(以下,電力システム)の「信頼性」を高めることが必須です。今回は、複雑な条件下での検証を解析的に行うためには限度があるため、シミュレーションによって様々な評価を行いました。

このシミュレーションによる評価をもとに、工場や病院などの多くの施設では、より安定的な電力供給を確保するための投資が容易になります。また、シミュレーションシステムを利用した効果として、以下のことが期待できます。

  1. 電力供給が不安定な状況下でも安定的な操業を可能にすることによる企業の信用回復
  2. 安定的な操業を低コストで実現することによる製品価格競争力の維持
  3. 医療設備の安定利用の実現による病院機能不全の回避および安心感の獲得

解決までの手順

電力システムを評価するシミュレーションシステムを構築と検証

信頼性を評価するためのシミュレーションとして、モンテカルロシミュレーションを行うシステムを構築しました。各シミュレーションにおいては、時間を離散化して考え、各時点で装置の故障を確率的に発生させることで評価しました。
故障発生による電力供給範囲をできるだけ抑えるために、電力フローが経由する各種装置の数を最小とするモデルを「最小費用流問題」として定式化。その結果に対して、電力の供給可否を判定し、設定した期間内のシステム不稼働率を算出するシステムとしました。また、システムを構成する要素の故障発生時点をシミュレーションの起点とする方法を用いることで、高速かつ良好な精度のシミュレーションを実現しています。

機能拡張

マイクログリッドを含む電力システムとして幅広く応用できるようにしました。これは、電力源の出力と需要点での電力需要について、任意の時間変動を扱うことが出来るようにしたものです。

産学共同研究開発

東京理科大学工学部経営工学科 渡邉均教授との共同研究

学会誌掲載

 請川克之、大江悠介、斉藤努『様々なネットワークシステムの高信頼化を実現するためのオペレーションズ・リサーチの役割』日本信頼性学会学会誌 Vol.33 No.5 2011年8月号

使用プロダクト

KKE/ORTOOLBOX

KKE/ORTOOLBOX 数理計算ライブラリ 数理計算の全てを盛り込んだライブラリ 数理計算の基本的な演算や、システムシミュレーションのエンジンなど、数理計算を用いたソフトウェア開発で必要なものを網羅しています。グラフ […]

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エネルギーのオペレーションズ・リサーチに関するお問い合わせ

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