配送業者 N様

概要

完成車物流の配送計画を自動策定するシステムを導入し、計画策定の負荷を軽減

完成車輸送会社のN社様は、日々の配送計画策定について、難易度が高いうえに属人性が高く、特定の担当者に負荷が集中してしまうことに悩んでいました。 構造計画研究所はN社様に対し配送計画策定支援システムを構築しました。配送計画策定支援システムの導入により、配送計画策定業務の負荷を軽減・分散できるようになりました。今後は配送計画策定支援システムの機能拡張と適用範囲拡大により、さらなる効率化を目指します。

完成車物流について

完成車物流とは、工場で生産された自動車の完成品(完成車)を顧客まで運ぶ物流を指します。

完成車物流が他の物流事業と異なる点として、キャリアカーに積載できる完成車の組み合わせ(積載パターン)が決まっていることが挙げられます。

例えば、完成車5台を載せられるキャリアカーでも、5台載せるためには大きい完成車と小さい完成車を組み合わせる必要があります。一方で大きい完成車だけでは4台までしか載せることはできません。 顧客が求める車種や台数を考慮しながら、完成車をどのような組み合わせでどのキャリアカーに載せるのか。形の複雑な完成車を運ぶうえで、避けられない難問です。

背景と課題

課題1. 多くの条件があり全てをクリアすることが難しい

キャリアカーに積載できる完成車の組み合わせ、販売店の営業時間、ドライバーの労働時間など、配送計画策定には多くの条件を考慮する必要があります。うっかり考慮から漏れてしまうと、ドライバーの負荷が増大する、顧客へご迷惑をおかけするといった事態につながります。条件の多さゆえに、全ての条件を満たす配送計画を策定するために日々長い時間を費やしていました。

課題2. 効率の良い配送ルートを見つけることが難しい

限られた業務時間の中で、全ての条件を満たす配送計画を策定することは簡単ではないため、配送効率の良さは後回しになる傾向がありました。本来は、いかに効率よく配送ができるかが配送計画の本質であり、全ての条件を満たすのはあくまでもスタートにすぎません。しかし、特に繁忙期となると、効率まで考慮することは困難になるのが実情でした。

課題3. ノウハウが属人化し特定の担当者しか対応できない

配送計画策定の難易度の高さから、対応できる人材が限定されてしまい、配送計画策定の負荷が集中するうえにノウハウの継承も困難であるという問題が生じていました。
配送計画は自社・顧客を含めて多くのステークホルダーに影響を及ぼします。難しく責任ある業務であることから、N社様では特定の担当者が常に計画を策定し、ノウハウを蓄積することで計画の質を担保されていました。反面、属人化が進むことで特定の担当者に負荷が集中し、悩まれていました。

ソリューション

積載パターンを考慮した配送計画策定支援システムを構築

課題解決のため、一般の配送計画システムでは考慮していない積載パターンを考慮可能な配送計画策定支援システムを構築しました。

ポイント1. お客様の業務に合わせたオーダーメイドのシステム提供

お客様の業務を伺って課題を抽出し、お客様の業務に合わせたシステムを提供いたします。 N社様の場合は、市販のパッケージでは対応できない積載パターンの考慮が必須でした。そこで、構造計画研究所の配送計画パッケージをカスタマイズすることで、N社様のニーズに合わせた配送計画策定支援システムを構築しました。

ポイント2. 積載パターンの作成

お客様から業務内容を伺う過程で、配送のノウハウについても伺いました。
伺った内容を踏まえ、N社様における現行車種の積載パターンを一覧化し、配送計画策定支援システムに活用いたしました。

配送計画エンジン ALPS Route

「ALPS Route(アルプスルート)」は構造計画研究所の所有する配送計画パッケージです。

配送計画策定支援システムには、コアエンジンとしてALPS Routeが使われています。

成果

導入した配送計画策定支援システムは、自動で各種条件を守りながら、高精度な配送計画を人間よりも早く策定できます。
配送計画策定支援システムが策定した配送計画を、実務上変更したい部分のみ必要に応じて手直しすることで、当初存在した以下の課題はすべて解決できました。

課題1. 多くの条件があり全てをクリアすることが難しい

積載パターンを含めた全ての条件を守りながら迅速に配送計画を策定できるようになりました。 具体的には、必要に応じた手直しを加味しても、配送計画策定に掛ける時間をトータルで20~30%削減できました。

課題2. 効率の良い配送ルートを見つけることが難しい

人手で配送計画を策定していた頃に比べ、配送ルートを効率化できるようになりました。
具体的には、配送に必要なキャリアカーの台数を抑えられるようになり、傭車の手配を約30%削減できました。

課題3. ノウハウが属人化し特定の担当者しか対応できない

配送計画策定の負担が軽減され、新任の方でも業務を担当できるようになりました。
さらに、配送計画策定支援システム作成の過程でノウハウが明文化されたことで、N社様内ではさらなる効率化に向けてノウハウをブラッシュアップするための議論が活発化しました。

今後の展望

さらなる業務の効率化へ

配送計画策定支援システムの導入により、N社様では配送計画の確実な策定と効率化、属人性の軽減が達成できました。 今後はさらなる業務の効率化に向け、配送計画策定支援システムの機能拡張および適用範囲拡大を目指します。

積載パターンの自動作成

現在、積載パターンは、現行車種の配送実績を基に作成されたものを用いています。今後は新車種の積載パターンも自動作成することで、積載パターンのメンテナンスが容易に行えるようになることが求められます。
新車種が発売されると、既存パターンへの当てはめや新規パターンの考案といった、積載パターンのメンテナンスが必要になります。昨今は車種の入替頻度も高くなっており、積載パターンのメンテナンスにおける負荷も軽視できません。配送計画策定支援システムを使い続ける上で、積載パターンの自動作成機能は、今後最も追加したい機能です。

中古車回収業務への適用

N社様では、完成車を運んだ帰り道に、中古車を回収して配送拠点へと戻り、翌日以降の配送に備えます。中古車はサイズが多様であるため、回収対象の中古車からどれを選んで載せるかは、ドライバーが現地で試行錯誤しながら判断しています。
中古車の積載も配送計画策定支援システムで指示できれば、ドライバーが現地で試行錯誤する時間を減らすことができます。
積載パターンの自動作成が実現すれば、サイズが多様な中古車にも配送計画策定支援システムを適用でき、さらなる効率化が達成できます。


より精緻な移動時間の適用

配送計画策定支援システムでは、キャリアカーが各地点を移動する際の所要時間をあらかじめ設定します。しかし、例えば移動時間を感覚的に1時間半と設定しても、実際には1時間40分を要するといった齟齬は生じます。時には、渋滞で想定の2倍以上の時間を要することもあります。齟齬が積み重なると、現実的に間に合わない計画や、必要以上に余裕を確保した計画を策定する原因になります。 今後、配送データを蓄積し、想定した移動時間と実際の移動時間が異なる経路があれば修正する、渋滞が生じる経路と時間帯を特定して一時的に移動時間を増やすといった対応を行うことで、より精緻な配送計画を策定することが可能になります。

使用プロダクト

ALPS Route

お客様にとっての"良い配送計画"を、素早く、簡単に ALPS Routeは、貨物の特性など様々な要素を考慮した配送計画を策定するエンジンです。貨物や顧客、ドライバなどの様々な要素を考慮し、車両編成から配送先の訪問順序まで […]

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