熟練者でも難しい業務を、誰でも上手に迅速に
顧客 : 株式会社帆風様
概要
自動面付システムを導入し、業務効率化
総合印刷会社の株式会社帆風様は、「面付け」という業務の効率化に悩んでいました。
構造計画研究所は帆風様に対し自動面付けシステムを構築。自動面付けシステムの導入により、 従来と比較して印刷のロスが36%削減され、業務遂行時間が37%削減されました。 この自動面付けシステムは新人でも操作可能で、担当者への依存ゼロも達成できました。さらには、面付け担当者だけでなく生産現場の負荷軽減にも貢献し、他工程も含めた業務改善への第一歩も踏み出しました。
今後は面付けを中心に前後の工程を巻き込み、印刷工程全体の業務フロー改革へとつながっていくことが期待されます。
帆風様について
株式会社帆風様は、紙にとどまらず、ウェアやボールなども含めた多種多様な印刷物を扱う総合印刷会社です。 帆風様は、人手頼みになりやすい印刷業界において、作業工程の自動化・効率化を積極的に追求してきました。また、小口の商業印刷(カタログ・チラシなど)に強みがあり、オフセット印刷という印刷手法で工程全体の効率化を図っています。
面付けについて
面付けとは、オフセット印刷において大きな印字領域に複数の印刷物を適切に配置する業務です。
面付けは、低コストかつ効率の良い印刷には欠かせません。しかし、1つの操作によりコストが増加する場合と減少する場合があることから、面付けは難易度が高いとされています。
面付けでは、印字領域に印刷物を隙間なく詰め込み、かつ各印刷物の印刷枚数をそろえる必要があります。 さらに、印刷物は適宜分割が可能であり、実質的に「印刷枚数を減らして面積を増やす」ことが可能です。 分割を駆使すれば、印刷物を隙間なく詰め込みながら高さもそろえることができます。 一方で、印刷物の分割により全体の印字領域が増えると、コスト増加につながってしまいます。以上のように、印刷物の分割によるコスト増減の見極めが必要であることが、面付けを難しくしている最大の原因です。
課題
課題1. ロスの多い面付けをしてしまう
効率的に面付けができれば資材のロスが減少するため、面付けはコスト削減に直結します。しかし面付け自体の難易度が高く、ロスの多い面付けをしてしまうこともあります。特に繁忙期では面付けを考える時間を十分にとることが出来ずにロスが多くなる傾向がありました。
課題2. 多くの人員が長い時間を割く必要
面付けの難易度の高さから、日々の面付けには多くの人員が長い時間を割く必要があります。 担当者は常に面付けをし続ける必要があるため、特に繁忙期は作業負荷が高まっていました。
課題3. 新人では熟練者のような結果が出せない
面付けは熟練者でも頭を悩ませる作業です。新人では熟練者のような結果が出せないのはもちろん、習熟には長い期間が必要です。 結果として、教育コストがかかるうえ、なかなか体制が安定しないという問題が生じていました。
ソリューション
柔軟にカスタマイズできる自動面付けシステムを構築
課題解決のため、構造計画研究所は自動面付けシステムを構築しました。
ポイント1. 高精度な切り出しロジック
高精度な切り出しロジックを用いたことで、熟練の担当者でも思いつかないような高精度の面付け結果を出力することができます。各種ルールをきちんと守りながら高い精度も確保することで、既存業務以上に洗練された解を導出します。
ポイント2. 現場の多様なルールを反映
生産現場の多様なルールを反映するべく、ルールを1つ1つ伺って吟味し、既存パッケージのカスタマイズを前提としてシステムを作り上げます。 時にはお客様とともに既存のルールを再構築することも。これにより、現場担当者が違和感なく納得できる解を導出します。
KKE/AdNeS
「KKE/AdNeS(アドネス)」は構造計画研究所の所有する切り出しパッケージです。 自動面付けシステムには、コアエンジンとしてKKE/AdNeSが使われています。
成果
高いレベルでの目標達成
自動面付けシステムの導入により、当初設定していた以下の目標は、すべて高いレベルで達成できました。
課題1. ロスの多い面付けをしてしまう
自動面付けシステムの導入前後で、印刷のロスが36%削減されました。印刷のロス削減は紙の節約でもあり、環境にも配慮できています。
課題2. 多くの人員が長い時間を割く必要
業務遂行時間が37%削減され、他の作業に従事する人員を増やせています。
課題3. 新人では熟練者のような結果が出せない
自動面付けシステムによる安定的な結果出力により、新人でも熟練者でも変わらない解が得られます。結果として、業務遂行において担当者への依存ゼロを達成しました。
さらなる課題解決
上述の目標以外にも、業務フローが改善するというメリットも得られました。例えば、担当者が作業に追われなくなったことで、後工程と連携する時間がとれるようになりました。 結果として、後工程では作業の見通しを立てやすくなり、業務効率が高まりました。自動面付けシステムの導入により、より効率的で、より働きやすい環境づくりにも貢献できています。
今後の展望
業務フロー全体の改革
自動面付けシステムの導入により、面付けと前後工程との連携が強化されるというメリットがありました。 今後は工程同士の連携をさらに強化し、業務フロー全体の改革へとつなげていくことが考えられます。
業務全体をつなげる
自動面付けシステムは、将来的に面付けを行いながら業務全体を俯瞰した生産スケジュールも組み立てることが期待されています。 自動面付けシステムであれば、多様な印刷工程のデータを利活用し、業務全体をつなげることができるからです。
すると、今まで当たり前だと思っていた各工程間のムリ・ムラ・ムダは一気に減少することとなります。
使用プロダクト
学会誌掲載
權田夏月,篠原健一,森永智仁,小松伊織,向田一光,橋本 雄士,山中 寿登『印刷業界の業務効率化に向けた切り出し問題の適用事例』日本オペレーションズ・リサーチ学会機関誌66巻7号 (2021)
製造のオペレーションズ・リサーチに関するお問い合わせ
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